2003年のHPC(その六)
「平成の語り部」小柳義夫です。電子ジャーナルHPCwire Japan https://www.hpcwire.jp/
に連載中の『新HPCの歩み』は、2003年の話題を終わりかけています。先週(j)と今週(k)の記事をご紹介します。SC2003の「その二」とアメリカの企業の動きです。
SC2003のExhibitors’ Forumでは、出展している各社が30分ずつ講演します。富士通は三浦謙一がPRIMEPOWER HPC2500について、日立はSR11000について講演しました。Cray社はBurton Smith自らが登壇し、DARPAのHPCSへの自社の取り組みを説明し、それが製品に生かされると強調しました。
今年で4日目となるSC2003のBandwidth Challengeでは、大阪大学も入っている国際チームと、平木チーム(東大等)と、建部チーム(産総研等)がそれぞれ違う部門で受賞しました。
Gordon Bell賞は、地球シミュレータを使った地震解析が性能賞を、牧野淳一郎らのGRAPE-6が顕著な成果賞を受賞しました。
最終日金曜午前では3並列で6つのパネルが行われました。「Productivityとは何か」のパネルでは、Productivity(生産性)を、(何らかの意味の)実効性能と考える人と、効率(実効/ピーク)と考える人が?み合いませんでした。
アメリカ企業では、IBM社はPOWER5が発表されました。Intel社は、x86ではPentium 4の第3世代が登場し、Itaniumではdual coreのMontecitoが発表されました。これでItaniumは主流に乗れるか?
他方、AMD社は、x86を64ビット化したAMD64アーキテクチャのOpteronが発売されました。デスクトップ用にはAthlon 64が登場しました。いずれも既存の32ビットアプリが高性能で実行できるところがミソです。Portland Groupもそのためのコンパイラを発売します。
Cray社はベクトルのX1と、OpteronのMPPであるXT3の両面作戦です。IBM社からUngarroを迎え、世界市場に乗り出します。
HP社は、自社のPA-RISCと、DECからのAlphaと、Intelと共同開発しているItaniumと3本建てで苦労しています。吸収したTandem社からのMIPSも。AlphaはEV7が出ましたが、そろそろ先が見えています。Itaniumを搭載したサーバも一応出しましたが、……。
NVIDIA社はまだHPCに手を出していませんが、製造をTSMC社だけでなくIBM社にも委託し始めました。ハイエンドはIBM社なのか?
次回は、2003年の最後の記事で、アメリカ企業の動きの続き、ヨーロッパやカナダの企業、中国の官民の動き、企業の創業などです。
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小柳義夫