2005年のHPC(その六)
「平成の語り部」小柳義夫です。電子ジャーナルHPCwire Japan https://www.hpcwire.jp/
に連載中の『新HPCの歩み』は、2005年の終わりに近づいています。先週232回(j)と今週233回(k)の内容を紹介します。(j)はSC|05の「その二」、(k)はアメリカ企業の動きです。
Top500の上位はほぼ予想通りでした。Top20にBlue Geneが5件入りました。今回のTop500への参入条件は1.636 TFlopsでした。日本設置のマシンでは、Blue Geneを1ラック導入したニイウスが目立ちます。
Linpackだけでは性能の全体像がみえないということで、新しいBenchmarkの提案がなされています。SC2003頃から議論が始まったHPC Challenge Benchmarkがいよいよ具体化してきました。Class 1ではLLNL BlueGene/Lが4部門の1位を独占しました。実装のエレガンスを競うClass 2では、IBMのUnified Parallel CとCrayのCray MTA/Cの2件が受賞しました。
Seymour Cray Awardは、去年のBurton Smithに引き続き、またまたCray社のSteve Scottに授与されました。私は2005年からは関係していません。
超伝導コンピュータのパネルセッションがありました。現在、量子コンピュータの多くは超伝導を使っていますが、これは超伝導を使った古典的コンピュータです。日本からの登壇者はありませんでしたが、実は、日本がかなり頑張っています。
Gordon Bell賞は、案の定BlueGene/Lを使った固化のシミュレーションでした。
バンド幅チャレンジで、平木らのグループはFastest IPv6の部門で受賞しました。4回目です。
IBM社は2005年に入って、ドドッとBlue Geneを世界各地に設置しました。他方、ソニーグループと東芝と共同開発したCell B.E.の技術仕様を公開し、試作品を披露しました。POWER/PowerPCとBleu GeneとCellの3本建てはいつまで続くのでしょうか。
Cray社も、ベクトルのX1Eと、Red StormのXT3とミッドレンジのXD1の3本建てを続けています。
AMD社にx86-64で先を越されたIntel社はItaniumへの投資を続けています。日本の3社などを巻き込んでItanium Solutions Allianceを結成しました。でも新製品の出荷はずるずる遅れています。SGI社はNYSEから上場廃止を通告されました。前回の危機に続き再度復活なるか。
次回は2005年の最後の号で、ヨーロッパや中国の動きを伝えます。
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小柳義夫