2007年のHPC(その六)

「平成の語り部」小柳義夫です。電子ジャーナルHPCwire Japan https://www.hpcwire.jp/
に連載中の『新HPCの歩み』は、2007年の国際会議の動きを追っています。11月10日の「新HPCの歩み(第257回)-2007年(j)-」、11月17日の「新HPCの歩み(第256回)-2007年(i)-」、本日の「新HPCの歩み(第256回)-2007年(i)-」をご紹介します。なお11月25日は、SC25直後のため休みました。ISC2007の「その二」、およびSC2007です。

ISC2007では、時流にさといThomas Sterlingが、マルチコアの時代を宣言しました。「Mooreの法則でトランジスタ数が増えても、Instruction Set Levelでの活用には限界があるので、どうしてもマルチコアになる。しかしそれには多くのチャレンジがある。」と述べました。新約聖書黙示録6章1-8節に出てくる4匹の(騎士の乗った)馬」に例えました。

牧本次生(つぎお)は、お得意の「牧本ウェーブ」の考察に基づき、今後の電子機器の動向を予言しました。

石川裕は、ペタフロップスのソフトウェアやミドルウェアについて諸問題を指摘し、T2K連合ではこれをどういう方向性で解決しようとしているか、について述べました。

Renoで(2回目に)開かれたSC2007では、多くの企業が展示を出しましたが、D-Wave Computer社が史上初の28 qubitsの商用量子コンピュータを展示しました。後に理解したことは、これはゲート型の量子チューリングマシンではなく、量子アニーラでした。

Gordon Bell賞のfinalistsに日本から2件が残りましたが、受賞したのは、BlueGene/Lによる気象予測でした。

ちょうど30回目となったTop500では、トップ10の半分が新顔という乱戦でしたが、日本の最高位はTSUBAMEの16位で、アメリカ、ドイツ、スエーデン、スペインだけでなく、インドにも負けています。

公式には初のGreen500は、Blue Gene/Pが上位を独占し、その次はBlueGene/Lで全然面白くありません。

「Fortranの50年」というシンポジウムがあり、みな勝手なことを言っていました。

会場の一角に、現在の技術とは隔絶しているが、今後5年から15年で実現する可能性のある変わった技術Disruptive Technologyの展示があり、パネルも開かれました。「IBM社の光プリント配線基板」や「Nantero社のカーボンナノチューブを用いたメモリ」「Luxtera社の40 Gb/sの光ケーブル」などが展示されました。

次回は、アメリカ企業の動きです。

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にあります。ご愛読を感謝します。

小柳義夫