1997年のHPC(その一)

HPC界のみなさま

二十世紀の語り部小柳義夫です。電子ジャーナルHPCwire Japan https://www.hpcwire.jp/
に掲載中の『新HPCの歩み』は、今週から1997年に入りました。9回にわたって連載します。今週の記事を御紹介します。「1997年の社会の動き」で始まり、「地球シミュレータ計画」、「日本政府の動き」、「日本の大学センター等」です。

地球シミュレータ計画では、大循環モデルAGCMを5 TFlopsの実効性能で稼働するという目標を定め、ピーク30 TFlops程度のベクトル計算機を開発することとしました。日本電気と富士通の概念設計の中から、日本電気を開発業者に選定しました。アプリ関係では「地球フロンティア研究システム」を創設し、真鍋淑郎氏をアメリカから地球温暖化研究プログラムの領域長に招聘しました。

日本政府は第1期科学技術基本計画の具体的方策の一つとして、「未来を拓く情報科学技術の戦略的な推進方策の在り方について」について新しく情報科学技術部会を設置して審議を進めることにしました。1999年まで16回開催されます。

日本学術振興会の未来開拓事業は2年目ですが、私も頑張って「計算科学」という新しいプロジェクトを立ち上げます。予算は5年間で総計25億円です。

前年、中目黒に移転した日本原子力研究所計算科学技術推進センターは、5台の並列計算機をプラットフォームとして、並列処理の実用化を進めます。

新情報処理開発機構(RWCP)は、後半の5年に入り、「実世界知能技術分野」と「並列分散コンピュータ技術分野」にターゲットを定め、PCクラスタをプラットフォームとしてシステムの開発を進めます。

大型計算機センター群で開催する「スーパーコンピュータ研究会」では、並列処理、HPF、MPIなどについて話を聞きました。

次回は日本の学界の動きと国内会議です。ご笑覧いただければ幸いです。総目次は https://www.hpcwire.jp/new50history です。

小柳義夫