1991年のHPC(その三)

HPC界のみなさま

二十世紀の語り部小柳義夫です。電子ジャーナルHPCwire Japan https://www.hpcwire.jp/
に掲載中の『新HPCの歩み』は、8月1日の第103回で、1991年の記述を終わりました。最後の2回について簡単にご紹介します。(全目次は、バナーの「特集記事」のプルダウン・メニューがらご覧ください)

科学研究費総合研究島崎班は、福岡で国際会議ISS’91を開催しました。全プログラムを掲載しましたが、講演者や題目を見ると当時のHPCの状況が浮かんできます。

HPCに関連の深い高エネルギー物理学関係の2つの国際会議CHEP 1991とLattice 91がつくばの高エネルギー物理学研究所で開催されました。前者では、岩崎洋一が格子QCD専用計算機について総合報告を行いました。

第4回目のSCはニューメキシコ州のAlbuquerqueで開催されました。、私は出席できませんでしたが、会議中のBoFからHPF Forumが始まりました。ISCの前身である第6回Mannheim Supercomputing Seminarでは、基調講演を含む過半数のプレゼンがドイツ語だったようです。

シリコンバレーのSanta ClaraではSupercomputing USA/Pacific 91という単発の「国際会議+展示会」が開催され、日米の有名人が講演を行いました。私は日本からの訪米団の団長に雇われ、周辺の研究所も訪問しました。

本格的なMPPがアメリカの企業から登場します。TMCはCM-5を発表し、Intel社はParagonのプロトタイプであるTouchstone DeltaをCaltechに設置しました。KSR社はKSR1を出荷しました。Cray社はC90を発表するとともに、MPPの計画が報道されます。Convex社もCray互換のベクトルだけでなくRISCチップを搭載したMPPの開発を始めています。アメリカでは超並列の花盛りですが、日本では??

ドイツのParsytec社は、T9000を搭載したGCシリーズを予告していましたが、T9000は夢に終わります。

1991年に創業された企業としては、HPFコンパイラで有名なApplied Parallel Research社、筑波大学のT2Kを製造したAppro社、A84FXの設計でも使ったBroadcom社(の初代)、そして武田喜一郎のソフテックなどがあります。

終焉を迎えた企業としては、Stardent社、FPS社、Digital Research社(CP/Mで有名)などがああります。

次回は1992年に入りますが、公開はお盆明けの8月22日からを予定しています。

小柳義夫@RIST