1992年のHPC(その三)

HPC界のみなさま

二十世紀の語り部小柳義夫です。電子ジャーナルHPCwire Japan https://www.hpcwire.jp/
に掲載中の『新HPCの歩み』は、1992年を7回に分けて連載しています。先週と今週の記事を紹介します。「世界の学界の動き」と「国際会議(特にSC92)」です。

前信で紹介したように、筑波大学では計算物理学のためのCP-PACSの開発を始めていますが、世界中で同様なプロジェクトが進んでいます。QCD Teraflops Project、APE100、GF11などです。APE100やGF11はSIMDですが、他はMIMDで、それぞれ自分のが最適と謳っています。

第6回のICS会議は初めてアメリカで開催され、富士通は300 GFlopsを越える並列ベクトルスーパーコンピュータを予告します。後のNWTとVPP500です。AIHENP 92(南仏)とCHEP1992(アヌシー)では、Tim Berners Leeが自らWWWのデモをやっていました。

コロンブスの新大陸到着500周年のSC92は”Voyage and Discovery”というタイトルの下にミネソタ州Minneapolisで開催されました。Larry Smarrは基調講演”Grand Challenges! Voyage of Discovery in the 1990’s”において、スーパーコンピュータの意義を強調しました。Steve Chenは招待講演で、Virtual Prototypingについて詳しく語りましたが、彼の作ったSSI社の動向については一言も語りませんでした。案の定、翌年には破綻します。

SC92の最終日(金)に、Seymour Crayの生まれ故郷のChippewa Falls(Wisiconsin州)にあるCray Research社の工場を見学しました。同社が開発中の超並列計算機(後のT3D)について面白いやりとりがありました。

次回はアメリカ企業の動きなどです。超並列の花盛りです。

小柳義夫