1996年のHPC(その四)

HPC界のみなさま

二十世紀の語り部小柳義夫です。電子ジャーナルHPCwire Japan https://www.hpcwire.jp/
に掲載中の『新HPCの歩み』は、今週で1996年の話を終わりました。先週と今週の記事を御紹介します。先週はSC96の後半、今週はアメリカその他の企業、企業の創業や合併吸収などです。

SC96では、基調講演に続いて、ASCIについてのパネルが午後まで3コマ開かれました。およそ1年半毎に3倍の性能増を実現するマシンを次々設置するという飛んでもない計画で、度肝を抜かれました。核実験禁止条約のもとで核抑止力を維持するために、核実験を計算機実験に置き換えようという当初計画でしたが、計算科学全体にも大きな影響を与えることになります。

Petaflopsに向かう計画も進んでいます。アーキテクチャの議論は具体的ですが、Petaflopsが応用に何をもたらすかはまだイメージに留まっています。

Gordon Bell賞は、性能部門で、NWTが流体力学で本賞を、GRAPE-4が専用計算機としてHonorable Mention(佳作)を受賞しました。

アメリカ企業として最大の動きは、Cray Research社を吸収合併したことです。SGIの会長CEOであるEdward R. McCrackenは、「両社の組み合わせにより世界をリードするHPCの会社を創造するであろう」と強気の発言を行いましたが、果たしてどうなるでしょう?

1987年に創立されたTera Computer社は、10年目の今年、ついにMTA-1を動かしました。コア当たり最大128スレッドを動かし、メモリレイテンシを隠ぺいするアーキテクチャです。SDSCに設置する予定です。

Seymour CrayはSRC社を創立して独自の超並列の設計を始めましたが、その矢先、自動車事故で他界しました。1994年には、Thinking Machines社とKendall Square Research社が表舞台から姿を消しましたが、今度はMasPar、nCUBE、Chen Systems、Weitek、Meikoなどかつてのビッグネームがまた終焉を迎えます。

次は1997年、日本では情報科学技術部会が、アメリカではPITACが設置されます。ご笑覧いただければ幸いです。総目次は https://www.hpcwire.jp/new50history です。

小柳義夫