1998年のHPC(その二)

HPC界のみなさま

二十世紀の語り部小柳義夫です。電子ジャーナルHPCwire Japan https://www.hpcwire.jp/
に掲載中の『新HPCの歩み』は、先々週から1998年分の連載を始めました。先週と今週の記事を紹介します。日本の大学センター、学界、国内会議、日本の企業の動き、標準化などです。ご笑覧に感謝します。

前回も書きましたが、日米貿易摩擦の中での、渡辺貞氏(日本電気)のEckert-Mauchly賞受賞は快挙でした。また高田俊和(日本電気基礎研究所)は化学反応の分子の動きを3次元で見ることのできるVRMSを公表しました。残念ながら高田俊和氏は2022年9月に亡くなられました。

このころ西森秀稔(東工大)は量子アニーリングのアイデアを発表しました。翌1999年、これを実用化するために、カナダのベンチャー企業D-Wave Systems社が創業します。このころ、DNAコンピューティングも盛んに研究されていました。

5回目のPSC98は、4種の並列プラットフォームの上で疎行列連立方程式の解法を競いましたが、上位入賞者が固定化してきました。SWoPP98では、雨のおかげで長岡花火大会に参加できました。

日本電気はSX-5を、日立はSR8000を発表しました。富士通にも次期機種の噂が。

MPI-2の規格書がIJHPCA誌の合併号として発表され、解説書も発行されます。HPFについては、日本のJAHPFがHPF 2.0の言語仕様書の日本語訳を公開します。また、HUG’98がPortoで開催されました。他方OpenMPでは、C/C++のためのOpenMPが公開されます。

企業連合による標準化されたUnix(とくにIA-64向けの)を開発しようとするProject Montereyが、IBM、SCO、Sequent、Intelにより始まりました。他方、Linuxも商用化の道を進み始めます。

来週は1998年(d)で、アメリカ政府の動き、日米スーパーコンピュータ摩擦、各国政府の動きなどです。ご笑覧ください。総目次は https://www.hpcwire.jp/new50history です。

去る9月8日(金)に、前のシリーズ『HPCの歩み50年』(2014年~2020年、全222回)https://www.hpcwire.jp/50history
の掲載完了記念パーティを催していただきました。コロナで3年延びました。ありがとうございました。

小柳義夫