2001年のHPC(その一)
(「二十世紀の語り部」改メ)「平成の語り部」小柳義夫です。電子ジャーナルHPCwire Japan https://www.hpcwire.jp/
に掲載中の『新HPCの歩み』は、今週から21世紀に入りました。今週の記事をご紹介します。「社会の動き」「地球シミュレータ計画」および「日本政府の動き」(その一)です。
社会では、9.11同時多発テロをはじめ、さまざまな動きがありました。世界が変わった激動の一年でした。
日本のHPC界にとって画期的なことは地球シミュレータの全筐体が搬入されたことです。しかし病床で「地球シミュレータセンター初代センター長」に就任した三好甫先生は、続々フロアに並ぶ筐体を一度も目にすることなく他界されました。ご冥福をお祈り申し上げます。
文中で言及した地球シミュレータ後継ペタスケールコンピュータの三好構想について、リンクを忘れました(後で付記します)。http://www.hpfpc.org/miyoshi-sympo/proc/81-omoide1B.pdf
これによると、プロセッサは50 nmテクノロジ、8 GHzで256 GFlops、ノードは8 TFlops、8 TB、システム性能は8~12 PFlops、2009年3月完成とあります。ベクトルとは明記されていません。ちなみに「京」は、45 nmテクノロジ、2 GHzで、プロセッサは8コアで128 GFlops、システム全体では88128プロセッサ、ピーク性能11.28 PFlops、2011年完成でした。
合わせて残念なのは、地球温暖化研究プログラム領域長としてアメリカから招へいした真鍋淑郎博士が、完成を待たずにアメリカに帰ってしまわれたことです。
その他の政府関係の動きでは中央省庁の再編があります。新設の総合科学技術会議では情報通信プロジェクトが構想され、また科研費特定領域(C)が始まりますが、ネットワーク関係にばかり重点が置かれ、われわれが推進しようとした「超高速計算機システム」がのけ者になっていたのにはがっかりしました。スーパーコンピュータは情報ではないのか!! それでも学振未来開拓研究事業「計算科学」は5年目、ACT-JSTは4年目を迎え、またCREST「情報社会を支える新しい高性能情報処理技術」が始まります。
さて、次回は「2001年(b)」で、「政府関係の動き」の後半と「日本の大学センター等」「日本の学界の動き」です。RWCPが終了するとともに、PCクラスタコンソーシアムが発足します。総目次はhttps://www.hpcwire.jp/new50historyです。ご愛読を感謝します。
小柳義夫