2001年のHPC(その四)

「平成の語り部」小柳義夫です。電子ジャーナルHPCwire Japan https://www.hpcwire.jp/ に掲載中の『新HPCの歩み』は、すでに2001年の後半に入っております。先週(e)と今週 (f)の記事をご紹介します。「アメリカ政府の動き」「日米貿易摩擦」「ヨーロッパ政府関係の動き」「その他の国の動き」「世界の学界の動き」「国際会議」などです。

日本電気は、スーパーコンピュータの対米ダンピングについて、連邦の通常の裁判所や連邦国際貿易裁判所などに訴えていましたが、すべて却下され、万事休すとなりました。ところが実は水面下でCray社との秘密交渉が進んでいました。

3月1日付の日本の朝刊各紙には、「NECスパコン、対立の大手に供給へ」、「NECクレイ社と提携」、「NEC“昨日の敵”と和解」などと衝撃的な見出しが躍りました。Cray社は日本電気のSX(実際はSX-6)を、Cray SXの名前でアメリカ、カナダ、メキシコなどにOEM販売することとなりました。1995年からの動きを年表の形でまとめました。

中国山東省の中国農業銀行に設置されたHPのSuperDomeが11月のTop500の148位tieに載り、中国設置コンピュータのTop500への初登場になりました。他方、曙光はDawning 3000(ピーク403 GFlops)を完成させ、金怡濂は「神威II(ピーク13.1 TFlops)」を完成します。また中国独自のCPU開発の龍芯プロジェクトが始まります。

量子コンピュータのニュースもいろいろ出ています。画期的だったのは、IBMが、5つのフッ素原子と2つの炭素原子から、7つの核スピンを持つ新しい分子を合成し、核磁気共鳴により7 qubitsの計算を行い、15=3×5 の因数分解ができたという「快挙」でした。実用化も遠くないか??

Hans Meuerが主宰してきたMannheim Supercomputer Seminarは、新世紀にあたりISCと改名し、Mannheim近郊のHeidelbergで開催されました。谷啓二は、地球シミュレータについて講演し、ピーク40 TFlopsのマシンにより、大気海洋相互作用と固体地球を解明しようとしていると述べました。Top500では、トップのASCI WhiteがLinpackでやっと7 TFlopsを出しました。それでもピーク比は59%です。

他方、第9回目のHPCN Europe 2001は、参加人数も減り、企業展示も少なく、会場も狭くなり、これが最終回となりました。

第5回目のHPC Asiaは、オーストラリアのGold Coastで開催されました。

さて、次回は「2001年(g)」で、同時多発テロ2か月後のSC2001です。
総目次はhttps://www.hpcwire.jp/new50historyです。ご愛読を感謝します。

小柳義夫