2001年のHPC(その六)

「平成の語り部」小柳義夫です。電子ジャーナルHPCwire Japan https://www.hpcwire.jp/
に掲載中の『新HPCの歩み』は、今週(i)で2001年を終了しました。今週の記事を紹介します。「アメリカの企業」「企業の創業・終焉」です。

IBM社はPOWER4を搭載したeServer p690 (コード名Regatta) を発表しました。これまでのSPとは異なり1ノード32コアまでは共有メモリです。複数のノード間の接続は当初Gigabit Ethernetですが、2002年にはColonyという高速スイッチが発売されます。

IBM社の「ぶっ飛んだ」超並列マシンBlueGeneは話を聞くたびに設計が変わるので雲をつかむようでしたが、LLNLとBlueGene/Lを開発するという発表がありました。だいぶ普通のマシンに近づいてきました。これが2004年に地球シミュレータを打ち負かします。

Cray社はこれまでSV2という名称で開発してきたベクトル計算機の技術情報を出し始めます。次の年X1という名称で発表します。MultithreadアーキテクチャのMTA-2は、4プロセッサのシステムが日本に出荷されました。翌年には40プロセッサのシステムが出荷されますが、この2台しか売れませんでした。

Microsoft社とSun Microsystems社は、1997年10月からJavaをめぐって裁判を続けてきましたが、2001年1月23日に和解が成立しました。両社とも自社の勝利と発表しました。

Microsoft社は反トラスト法(独占禁止法)の訴訟も受けており、前年2000年にはOS部門とアプリケーション部門に分割せよとの命令が出ましたが、これを控訴審で覆します。11月、3年にわたる反トラスト法訴訟は最終合意に達します。2002年11月、連邦地裁はこの和解案を承認します。昨今のニュースにもあるように、アメリカもヨーロッパも、独占的地位を利用した市場支配には敏感に反応します。

Intel社はやっとItaniumを出荷しました。予定より2年も遅れており、すでに他のプロセッサに負けています。早くも次のMcKinleyに注目が集まりました。他方AMD社はx86路線をひたすら走っています。

カナダでは、OctigaBay Systems社の前身が創立されます。2004年にはCray社に買収され、開発していたFPGA搭載のマシンはCray XD1として出荷されます。

DEC社買収以来業績が低迷していたCompaq社は、Hewlett-Packard社に買収されます。ところがHewlett家もPackard家もこの買収に反対で、株主総会では両創業家の反対を押し切って僅差で可決します。Walter Hewlett取締役はDelaware州裁判所に提訴しますが、2002年5月初旬に裁判所が訴えを退け、迷走の末の合併はやっと完了しました。

次回(多分、再来週)から2002年です。地球シミュレータが世界を驚かせます。

総目次はhttps://www.hpcwire.jp/new50historyです。ご愛読を感謝します。

小柳義夫