2002年のHPC(その四)

「平成の語り部」小柳義夫です。電子ジャーナルHPCwire Japan https://www.hpcwire.jp/
に掲載中の『新HPCの歩み』は2002年の中ほどまで来ました。先週(f)は「アジアの動き」「ヨーロッパの動き」「世界の学界の動き」、今週(g)は「国際会議」です。2回分の記事を紹介します。

中国のベンチャ企業の聯想集団(Legend、2003年からLenovo)は、中国初の商用スーパーコンピュータDeepComp1800(深騰1800)を開発しました。これはIntel社のXeonプロセッサと272 GBのメモリを搭載したノード526台で構成され、6 TBのHDを持ちます。ピーク1 TFlopsで、9月には中国科学院に設置する予定です。北京での発表会は、全人代の幹部も出席して大々的に開催されました。

2002年にはじめてChina HPC Top100が発表されました。中科院数学与系統科学研究院の「深騰1800」が堂々トップに載っています(Top500では43位)。China HPCTop100の輸入機ではHPのSuperDomeが目立ちます。

インドのC-DACは自前のスーパーコンピュータ開発を続けてきましたが、この年TFlops級のスーパーコンピュータPARAM Padmaを製造するとの意気込みでしたが、私は年末にHPC Asia 2002でBangaloreを訪れ、実物を拝見しました。正式披露は2003年です。

ヨーロッパではDEISAが結成されます。2011年にPRACEができてからは第二階層として位置づけられます。

ECMWFは富士通のVPP700に代えて、IBMのp690クラスタが導入されました。他方、ドイツ気象庁の計算センターではCray C90に代えて、SX-6が導入されます。

NCSAは10人が「グリッドとは何か」を論じるページを用意しました。人によって考えも違うし、時間とともに変わります。

HPCとはあまり関係がありませんが、Bell研究所で一人の若手の論文捏造が発覚し、大事件となりました。

多くの国際会議が開かれましたが、私の目についたものだけ報告します。グリッド関係が増えています。Microprocessor Forum 2002で、富士通の井上愛一郎はSPARC 64Vの詳細を発表しました。

私の参加した大きな会議、ISC2002、SC2002、HPC Asia 2002については章を改めて紹介します。来週はISC2002です。

総目次はhttps://www.hpcwire.jp/new50historyにあります。ご愛読を感謝します。

小柳義夫