2002年のHPC(その六)

「平成の語り部」小柳義夫です。電子ジャーナルHPCwire Japan https://www.hpcwire.jp/に掲載中の『新HPCの歩み』は2002年の最後に近づいています。先週(j)はSC2002の「その二」、今週はHPC Asia 2002です。2回分の記事を紹介します。

第20回目のTop500が発表され、地球シミュレータのトップは揺らぎませんが、20位以内に他の日本のマシンは無くなりました。10位までのうち6件が初登場で、PCクラスタも2件あります。前回からも出ていましたがIBM eServer p690が目立ちます。

HP社のSuperdome/Hyperplexシステムが112件あり、これを含め140件がMyrinetを採用しています。

Top500の10年間の総括もありました。

わたしはThe Seymour Cray Computer Science and Engineering Awardの2002年~2004年の審査委員を務めました。2002年には日本から地球シミュレータの推進者である三好甫氏が推薦されましたが、「原則、存命者」というルールで、前年末に亡くなられた三好氏は不利でした。いい線まで行きましたが、受賞者はMonty M. Denneau氏(IBM)に決まりました。IBM社の並列処理開発(TF1/Vulcan, GF 11, IBM-SP series, Blue Gene, The Wiring Machine, Yorktown Simulation Engineなど)において一貫して指導的立場にあった人です。

Gordon Bell賞では、地球シミュレータ関係で3件が受賞しました。Peak Performance賞ではスペクトル法による地球大気シミュレーションが、Special Award for Language賞ではHPFによる3次元流体シミュレーションが、Special賞ではFFTによる3次元乱流によるDNSが受賞しました。

高性能バンド幅チャレンジでは、“Data Reservoir ” 東京大学、富士通研究所、富士通プログラム技研のチーム(代表、平木敬)がMost Efficient Use of Available Bandwidth賞を受賞。グリッドデータファーム(産総研)は惜しくも受賞を逃しました。

最終日には「特注スパコンは絶滅危惧種か?」「地球シミュレータのインパクト」等のパネルが行われ、渡辺貞氏、中村壽氏、佐藤哲也氏などが熱弁をふるいました。

HPC Asia 2002がインドのBangaloreで12月に開かれ、私は初めてインド入りしました。

各社が展示やプレゼンを行いました。HP社のFrank Baetkeは、「AlphaやPA-RISCはItaniumに置き換えられるであろう」と予言しましたが、そのItaniumも無くなりました。

Intel社はスポンサーに名を連ねながら展示は出していませんでしたが、Paragon以後HPC業界では影が薄くなっていたのを巻き返し、再びこの分野に乗り出すと述べました。

市内のC-DACを訪問し、稼働を始めたPARAM Padmaを見学しました。

2002年はあと2回ですが、来週はアメリカ企業の動きです。

総目次はhttps://www.hpcwire.jp/new50historyにあります。ご愛読を感謝します。

小柳義夫