2002年のHPC(その七)

「平成の語り部」小柳義夫です。電子ジャーナルHPCwire Japan https://www.hpcwire.jp/に掲載中の『新HPCの歩み』は、本日2002年を終わりました。ご愛読を感謝します。先週と今週の記事を紹介します。アメリカ企業の動き、その他の企業の動き、企業の創業/終焉です。

IBM社はPalmisano新社長のもと、On Demand Computingなど新たな動きを始めました。BlueGene/LはLinuxを搭載すると発表しました。地球シミュレータを凌駕できるか?

Cray社は、日本電気のSX-6をOEMでCray SX-6として販売し、カナダとアラスカに計4台売れました。2004年にもカナダに3台売り、総計7台でした。アメリカ本土(ハワイ、アラスカを除く)に1台も売っていないのは、Cray社の意地でしょうか? 自社製のX1も発表されました。

HP社のFiorina CEOは創業家の反対を押し切ってCompaq Computer社(旧DEC社を含む)の合併を強行しました。さて、業績は上向くか?

SGI社は、R14000を搭載したOrigin 3900を発表し、日本にも導入されました。

Intel社は、第1世代のItaniumが不評で、さっそく第2世代のItanium 2(コード名McKinley)を発表しました。果たして、悪評を打ち消すことができるのか。また同社は「90nmテクノロジにより10 GHzのクロックのチップを作れる」と豪語していますが本気か?

AMD社は、x86を64ビットに拡張したOpteronを発表しました。HyperTransportも採用しています。対するItaniumの運命はいかに?

1998年5月、アメリカ20州とWashington DCの検事総長と司法省からWashinton連邦地裁に提訴されていたMicrosoft社に対する反トラスト法訴訟は、2001年に和解案が提示されましたが、強硬派の9州はまだ粘っています。Microsoft社のSteve Ballmer CEOは3月4日の宣誓供述において、「もし連邦地裁が、9州の要求しているような裁定を下すなら、我が社はWindows OSから撤退せざるを得なくなる。」と脅しを掛けました。言いますね。11月の判決で9州の要求はおおむね却下され、Microsoft社は今後,コンピュータ・メーカによるMicrosoft社製品と競合製品の同時提供を認めることになりました。しかしこの裁判はMicrosoft社の事実上の勝利と見られています。

前年カナダで創業したOctigaBay Systems社は、OpteronとFPGAを用いたOctigaBay 12Kを発表しました。このあとCray社に買収され、Cray XD1となります。

台湾のTSMC社は、130nmのテクノロジは収益段階に達し、90nmプロセスの準備も整っていると発表しました。順調のようです。

次回からは2003年です。地球シミュレータの成功を受けて、次世代スーパーコンピュータ(後の「京」)への調査研究が始まります。グリッド関係では、NAREGIや産総研グリッド研究センターも発足します。お盆明けに掲載が開始されます。

総目次はhttps://www.hpcwire.jp/new50historyにあります。ご愛読を感謝します。

小柳義夫