2003年のHPC(その一)
「平成の語り部」小柳義夫です。電子ジャーナルHPCwire Japan https://www.hpcwire.jp/
に掲載中の『新HPCの歩み』は、本日2003年に入りました。筆者が還暦となった年です。記事にも書きましたが、わたくし事で珍事がありました。東大の医科研の事務が、東大の支払いデータベースの私の口座を、東北大学の小柳義夫(コヤナギヨシオ)教授の口座に誤って書き換え、私への旅費等の支払いがコヤナギ先生の方に行ってしまうという珍事でした。今週の記事を紹介します。
前年世界を驚かせた「地球シミュレータ」を紹介する番組が、NHK教育テレビの「サイエンスワールド」で取り上げられ、私がメインプレゼンタとして出演しました。共同利用は2年目に入り、課題公募において、「大気・海洋分野」と「固体地球分野」の地球科学の他に、「計算科学分野」と「先進・創出分野」が設けられ、世界トップの計算資源を、狭義の地球科学以外の分野にも提供することになりました。完成前に、原子力研究所の浅井清理事に「資源の一部を他の分野に使わせてほしい」と申し上げたら、断固拒否されたことを思い出します。
地球シミュレータの成功を受けて、次世代スーパーコンピュータ計画が水面下で動き出しました。政府の情報通信分野推進戦略(平成13年9月)においては、「スーパーコンピュータの高速化については、各分野の需要に応じて推進する」とされ、国家プロジェクトとはしないこととなっていましたが、RISTは2000年頃から「基礎研究における次世代高性能計算機環境に関する調査研究会」を受託していました。転機は2004年に起こります。
グリッド関係では、前年に産総研グリッド研究センターやアジアグリッドイニシアチブや大阪大学バイオグリッド・プロジェクトが始まっていましたが、2003年にはNIIを中心にNaReGI「超高速コンピュータ網形成プロジェクト」が始まりました。また、経済産業省が進める「ビジネスグリッドコンピューティングプロジェクト」に28億円の予算がつきました。
次回は4年目を迎えたITBL、ハワイ島Konaで開催された「日米計算科学円卓会議」など。日本学術振興会の未来開拓「計算科学」は終了します。JSTでは1998年から始まったACT-JSTが終了し、JST「JSTシミュレーション技術の革新と実用化基盤の構築」は2年目に入ります。
総目次はhttps://www.hpcwire.jp/new50historyにあります。ご愛読を感謝します。
小柳義夫