2005年のHPC(その七)

「平成の語り部」小柳義夫です。電子ジャーナルHPCwire Japan https://www.hpcwire.jp/
に連載中の『新HPCの歩み』は、本日公開の2005年(ℓ)をもって2005年の記述(全12回)を終了いたしました。今週の記事をご紹介します。ヨーロッパ、中国、その他の動き、企業の終焉です。

2002年にイギリスで創立されたClearSpeed Technology社は、2005年6月、CSX600を発表しました。当時NVIDIAのGPUは64ビット演算に対応していなかった(非常に遅かった)ので、64ビット演算でピーク40 GFlopsのこのチップは科学技術計算関係者に衝撃を与えました。東京工業大学(現東京科学大学)のTSUBAMEもCSX600を大規模に導入すると発表しました(稼働は2006年)。

今は懐かしMeiko Scientific社に源をもつQuadrics社(Quadrics Supercomputer World社、ブリストルとローマ)は、最上位のスーパーコンピュータをターゲットにした相互接続網QsNet IIで快進撃です。

一方中国のサーバメーカーである曙光集団(Dawning)の歴軍(Li Jun)総裁は、Dawning 5000で100-200 TFlopsを実現すると発表しました。実現するのは2008年です。

IBMのPC部門を2005年5月1日買収したLenovo社(聯想集団)は、1 PFlopsのスーパーコンピュータを構築するプロジェクトに取り組んでいることを認めました。

Steve Chen(陳世卿)はGalactic Computing社を深圳で設立しています。

11月のTop500には中国設置のマシンが17件あり、最高はIBM p655の26位ですが、中国製も3件あります。Dawning社、Lenovo社、Galactic社製各1件です。他方、中国は2002年から年1回、「中国Top100」を発表しています。Top500に出ていないマシンもあります。

なおこの年、いっとき将来を嘱望されたAvaki社、Transmeta社、nCUBE社などが姿を消しました。「夏草や、つわものどもが夢の跡」

次回からは2006年です。東工大のTSUBAMEが6月のTop500で7位を獲得し、地球シミュレータを抜きます。Cray社はCray XT4とCray XMTを発表します。PlayStation 3が発売されます。中国ではShenWei(申威) SW-1プロセッサが開発されます。

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小柳義夫