2008年のHPC(その四)

「平成の語り部」小柳義夫です。電子ジャーナルHPCwire Japan https://www.hpcwire.jp/
に連載中の『新HPCの歩み』は、2008年の半ばまで来ました。先週の2008年(f) (第267回)では「国内会議」(その二)を、今週の2008年(g) (第268回)では「日本の企業」と「標準化」について書いています。

SACSIS 2008はつくば国際会議場を会場として開催され、昨年と同様に、Cellスピードチャレンジ2008を行いました。終了後、希望者に対して、T2K-Tsukubaの見学が行われました。

SWoPP佐賀2008は、佐賀市天神どんどんどんの森内のアバンセで開催されました。「EXA-FLOPS スーパーコンピュータの実現を目指して」など3件のBoFが行われました。これに続いて、九州大学情報基盤センターにおいて「高精度・多倍長計算に関するフォーラム」が開催されました。この頃は、64ビットのハードで128ビットや256ビットなどの計算を行うことが前提でしたが、現在ではその技術が、16ビットハードで64ビット演算を行うことに使われています。「歴史は繰り返さないが、韻を踏む」(伝Mark Twain)

11月、東京でFortranに関する国際規格会議が開かれたのを機会に、講演会「Fortran規格最前線 特にcoarrayについて」が東大で開催され、意見交換がなされました。

富士通は、SPARC64 VIIと、これを搭載したハイエンドテクニカルコンピューティングサーバFX1を発表し、大規模なシステムがJAXAと名古屋大学に入ります。

日立は、POWER6を搭載するスーパーコンピュータ「SR16000」を発表しました。大規模なシステムが核融合研と気象研に入ります。

クレイ・ジャパンは、ホテルラフォーレ東京においてワークショップを開催し、発表したばかりのCray CX1(Intel社のCPUを搭載)を披露しました。

標準化では、改訂された浮動小数点数の世界標準IEEE 754-2008が公表されました。この規格から16ビットの半精度実数が「演算用ではなく、(グラフィックデータなどの)交換形式」として導入されましたが、現在ではAIなどの演算用として多用されています。

産総研グリッド研究センターでは2005年度から2007年度にわたりグリッド技術のガイドライン標準化調査研究活動の委託事業を受けて活動してきましたが、その成果の上に、JIS原案の作成を7月から始めました。紆余曲折もありましたが、翌2010年(平成22年)2月22日(2のぞろ目の日)に、「JIS X7301 グリッドシステム要求事項策定のための指針」を制定します。グリッドを国の規格(de jure)にするなど空前絶後でしょう。しかし既に世の中の趨勢はグリッドよりクラウドに移りつつありました。

なお、産総研グリッド研究センターは4月1日付で発展的に消滅し、情報技術研究部門に吸収合併されました。

次回は、2008年(h)「アメリカ政府の動き」です。Cell B.E.を搭載したLANLのRoadrunnerが、初めてLinpackで1 PFlopsを越えます。

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小柳義夫