2009年のHPC(その八)
HPC関係者の皆様
「平成の語り部」小柳義夫です。電子ジャーナルHPCwire Japan https://www.hpcwire.jp/
に連載中の『新HPCの歩み』は、2009年の終わりに近づいています。先週の2009年(n)(第290回)は「SC09(その二)」、今週の2009年(o)(第291回)は、「アメリカの企業の動き(その一)」です。
SC09の展示では、企業展示が減り(リーマンショックか?)、研究展示が増えました。企業展示では、GPGPUやmanycoreなど演算加速器のハードやソフトの展示が眼を引きました。NVIDIAは大きなブースを出し、次期GPUのTesla Fermiを発表したばかりですが、直前に出荷が遅れそうとのニュースも。ClearSpeedとQuadricsが登場せず、苦境が伝えられました。QsNet IIIは結局出ないままでした。
Top500では、ORNLのJaguarは、前回僅差でRoadrunnerに破れましたが、今回プロセッサを6コアのIstanbul(クロック2.6 GHz)に代えて1位を奪取しました。「どうせ2位」ならと、Roadrunnerはコア数を少し減らしました。日本の最上位はES2で31位です。欧米のみならず、中国にも、韓国にも、サウジアラビアにも、インドにも負けています。
Green500は、ほとんどがCell B.E.のクラスタかBlue Gene/Pで面白くありません。Grape-DRと天河1号だけが異色を放っています。
HPC Challenge Class 2 Awardsは、解法のエレガントさやプログラム開発効率の観点での言語や開発に対しての表彰ですが、筑波大学のXcalableMP言語によるエントリはHonorable mentionを獲得しました。
アメリカ企業ではIBM社がPOWER7とBG/QとCellの3方面作戦を続けています。SC09で展示されていたPOWER7のボードは、幅1 mで奥行きが1.8 mで160kgもあり、まるで畳です。金田康正氏は高い技術と称賛していましたが、Blue Watersへの搭載は最終的に断念されることになります。
Intel社のメニーコア戦略は迷走を続けています。2006年に発表されたLarrabeeやPolarisは中止され、Single-chip Cloud Computer (SCC)が発表されます。これがXeon Phiにつながります(が、それも結局中止されます)。
Intel社は携帯や組み込みを狙って低消費電力のAtomを発表しましたが、多くの人の予想通り、携帯などには普及せず、かえって自社のPCのCPUを食うことになりました。Atomは2016年に終了を発表。しかもそれがXeon Phiのロードマップにまで影響を及ぼします。
AMD社は6月、nativeな6コアをもつIstanbulを発表しました。
次回は、2009年の最終回で「アメリカの企業の動き(その二)」「アジアの動き」「企業の創業」「企業の終焉」です。SunとSGIの両ビッグネームが消えたのは驚きでした。TransmetaやSiCortexも。リーマンショックでしょうか。
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小柳義夫

