1997年のHPC(その四)
HPC界のみなさま
二十世紀の語り部小柳義夫です。電子ジャーナルHPCwire Japan https://www.hpcwire.jp/
に掲載中の『新HPCの歩み』は、1997年に開催された国際会議について書いています。先週と今週の記事を紹介します。「国際会議(1997年後半)」および「SC97(その一)」です。
ヨーロッパとアメリカが共同で交互に開催している計算物理の国際会議PC’97が、UC Santa Cruzを会場として開催され、私も出席してCP-PACSについて講演しました。このころ私は、「並列処理のEvangelist」とかおだてられてそこら中でCP-PACSについて講演しています。CP-PACSの安定性、分割運転、将来計画など多くの質問が出ました。またASCI計画の関連では全体講演が7件もあり、熱心な議論が行われました。
10月にSan Joseで開催されたMicroprocessor Forum 1997では、Intel社とHewlett-Packard社が共同開発しているIA-64命令セットアーキテクチャの詳細が開示されました。でも初代のMercedの開発は遅れに遅れています。
SC97ではプログラム委員を務め、プログラム委員会のロゴ入りのTシャツをもらいました。SC18でたまたま着ていたので、「30周年記念展示」のSC1997パネルの前で朴泰佑さんに写真を撮ってもらいました。
私はプログラム委員会で反対したのですが押し切られ、SC97は500語のアブストラクトで論文募集しました。案の定これは大失敗でした。教育プログラムK-12ではプルトニウムを発見したDr. Glenn Seaborgが講演しました。
インターネット20周年という展示がありましたが、1977年にはARPANETはまだTCP/IPを使っていませんでした(1983年から)。
日米スーパーコンピュータ摩擦が激しくなっていましたが、日本の3社(日本電気、富士通、日立)は堂々と企業展示に参加しました。今年はなんと Compaq も出展しましたが、翌年のDEC買収の伏線だったかもしれません。
State-of-the-field talk(各分野の最先端講演)で、J.L. Hennessyは5-10年後にベクトルコンピュータは消滅すると述べましたが、5年後に巨大ベクトルコンピュータである地球シミュレータが登場して、世界を驚かせます。
もう一つのState-of-the-field talkでは、Ken Kennedyが、HPCの並列処理、特にHPFについて、「グランドチャレンジが技術を無視して性能を求めたことが失敗の原因である」と断じました。これは議論のあるところでしょう。
次回は「SC97(その二)」です。アーキテクチャやPACIに関するパネル、Gordon Bell賞、Sidney Fernbach賞、Top500など。
ご笑覧を感謝いたします。総目次は https://www.hpcwire.jp/new50history です。
小柳義夫