1998年のHPC(その四)
HPC界のみなさま
二十世紀の語り部小柳義夫です。電子ジャーナルHPCwire Japan https://www.hpcwire.jp/
に掲載中の『新HPCの歩み』は、今週で1998年を完了いたしました。先週と今週の記事を紹介します。「SC98(Orlando)」「アメリカの企業の動き」「ヨーロッパの企業の動き」「中国の企業の動き」「企業の創立」「企業の終焉」です。
第11回目にあたるSC98は、第1回と同じOrlando(フロリダ州)で開催されました。筑波大学CCPは初めて研究展示を出しました。電総研と続きの場所を取り、Tsukuba HPC Allianceと称してミニプレゼンなどを行いました。記事には1995年に筑波大学が初めて出展したと書きましたが、私の記憶違いのようです。慶応義塾大学SFCの村井純教授は、展示会場から母校の授業を行ったそうです(アメリカでは夜です)。
アメリカではGore副大統領が先頭に立って推進しているHPCCの進展を見て、HPCでもネットワークでも、日本は遅れていると焦燥感を感じました。
3 TFlops級のはずのASCI Blue Mountain/Pacific はTop500に登場しましたが、1 TFlops級のはずのASCI Redの後塵を拝しています。Top10から日本設置のマシンが消えました。Gordon Bell賞でも、少し前はNWTやGRAPEが続々入賞していましたが、今やDOE一色です。
さて、SGI社はベクトルコンピュータCray SV1を発表し、出荷しましたが、その後の改良型でも最大ピーク性能64 GFlopsで、Top500には一度も載りませんでした。SX-4は20位以内に2台も入っているのに。他方MPPでは、バンド幅を増強したCray T3E1200Eなど高性能機満載です。SGIは今後どうする気か?
IBM社は完全64ビットのPOWER3とそれを搭載したWSを発表します。MPPは翌年です。
Sun Microsystems社はE10000(コード名Starfire)を500台も販売しています。次はSerengetiです。
Intel社は、サーバ用に、Pentium II Xeonを発表、発売しましたが、IA64(Merced)は遅れに遅れています。サーバ各社は、みなIA64ベースに次期システムを設計しているのに。
DEC社はCompaq社に買収されましたが、Alphaの高性能化は続き、Alphaを搭載したCray T3Eも順調です。
1999年には、各プロセッサがGHzの壁を破るべく突進します。
Tera Computer社のMTA-1は、年末に4プロセッサがSDSCに設置されます。現実問題の不規則アクセスにはMPPよりMTAの方が適していると主張しています。GFlops当たり4kWの電力はちょっと問題ですが。
この年、Google社、VMware社、Avaki社(の前身)、DDN社などが創業されています。
さて次は1999年、世紀末も近づいています。情報科学技術部会は最終答申を出すとともに、「先導プログラム」が始まります。クリントン政権は、PITAC報告を受けて「21世紀の情報技術」イニシアティブを提唱します。
ご愛読を感謝します。総目次はhttps://www.hpcwire.jp/new50historyです。
小柳義夫