1990年のHPC(その三)
HPC界のみなさま
二十世紀の語り部小柳義夫です。電子ジャーナルHPCwire Japan https://www.hpcwire.jp/
に掲載中の『新HPCの歩み』は、5月23日から1990年に入り、5回にわたって連載しています。本日5回目で完結しました。最後の2回を簡単にご紹介します。
HPC関係で様々な国際会議が開催され、いくつかは私も出席しました。3回目となる、SC90では、CM-5を発表して意気の上がっているTMCの創立者Daniel Hillisが基調講演で「最速の計算機」とぶち上げました。私も聞いていましたが、わずか3年後に躓くとだれが想像したでしょうか。
シンガポール独立25周年記念日の前日まで開かれた高エネルギー物理学の国際会議で、私はQCDPAXについて発表しましたが、「分割運転できるのか」という鋭い質問がありました。2Dトーラス接続なので分割するとトーラスでなくなってしまいます。
IBM社は、32ビットマイクロプロセッサPOWER1を発表しました。私は高性能なWSができるな、くらいにしか思いませんでしたが、このシリーズのプロセッサが以後しばらくスーパーコンピュータ界を席巻します。他方、Intel社は、i860を搭載したiPSC/860で高い性能を実現し、さらに大型のTouchstoneを稼働させます。Paragonのうわさも聞こえてきます。MasPar社もMP-1を出荷します。
ベクトルでは、Seymourが力を入れていたCray-3の1号機がLLNLから注文を受けましたが、どうなるのでしょう。
イギリスではARM社の前身が誕生します。次回は1991年です。
小柳義夫