1996年のHPC(その二)

HPC界のみなさま

二十世紀の語り部小柳義夫です。電子ジャーナルHPCwire Japan https://www.hpcwire.jp/
に掲載中の『新HPCの歩み』は、1996年に入っています。先週は連休中で休載しましたが、先々週と今週の記事を御紹介します。日本企業の動き、標準化、性能評価、アメリカ政府の動き、日米貿易摩擦、ヨーロッパや各国の動き、世界の学界の動きです。

最大の事件は、NCAR(アメリカの国立気象研究所)のスーパーコンピュータ導入をめぐる政治介入です。技術審査と入札によって日本電気のSX-4を中心としたシステムが落札したにも関わらず、民主党の下院議員が政治介入します。曰く、「アメリカの税金を日本や他の国の企業を助成するために使うべきでない」と。連中は、日本には、日本の税金でアメリカのスーパーコンピュータを買えと言っています。研究者は高性能のマシンを使いたいだけなのに、それを「企業への助成」ととらえるところに助成体質がしみ込んでいます。クレイ社はダンピング提訴に踏み切り、事件は年を越します。

さて、富士通はVPP300の並列度を上げたVPP700を発表します。日本だけでなく、イギリス、ドイツ、フランスなどに売れています。また超並列機としてはAP3000を発表しました。AP1000はテストベッド的でしたが、これは実用的な超並列サーバです。日立は、CP-PACSの商用版であるSR2201を出荷し、既報のように東京大学のSR2201/1024は6月のTop500でトップを飾ります。

標準化ではHPF Forumが精力的に作業を進め、HPF 2.0原案がまとまります。日本関係からは、富士通アメリカの三浦謙一氏や、1995年までRice大学に滞在していた日本電気の妹尾義樹氏が参加しています。また、グリッド関係では、Globusプロジェクトがオープンソースプロジェクトとして始まります。

5月からSNL (Sandia National Laboratory)にASCI Redの設置が始まります。11月22日にはLinpackで327 GFlopsを出していたそうで、もう一歩早ければ筑波大学CP-PACSの1位は幻になったかもしれません。3 TFlops級を狙う次のASCI Blueは、IBMとSGIの提案から一つを選ぶのではなく、両方を採択しLLNLとLANLに設置することになりました。

NSFのスーパーコンピュータセンターのリストラでは、現4センターがPACI計画の最終候補になりました。来年にはここから2センターを選ぶことになります。さて、残るのはどこか?

BostonのThe Computer Museumのいわば西海岸支所として、101号線に近いMoffett FieldにThe Computer Museum History Centerが開設されました。1999年にはBostonが閉館となり、すべてがこちらに移ります。

中国は、Alpha21164を使った312 GFlopsの「神威I」を完成しました。神威藍光や神威太湖之光の遠い先祖です。

ご笑覧いただければ幸いです。総目次は https://www.hpcwire.jp/new50history
です。

小柳義夫