2004年のHPC(その二)
「平成の語り部」小柳義夫です。電子ジャーナルHPCwire Japan https://www.hpcwire.jp/
に連載中の『新HPCの歩み』は、先々週から2004年の連載が始まりました。先週の(b)では「日本政府関係の動き」、本日公開の(c)では「日本の大学センター等」「日本の学界の動き」です。
文部科学省の「科学技術・学術審議会」は「国として戦略的に推進すべき基幹技術」の一つに「ペタ・フロップス級のスーパーコンピュータを開発と、必要なソフトウェアの開発」を挙げました。「従来の技術では不可能な高度なシミュレーションを実現するために、2010年までにペタ・フロップス級のスーパーコンピュータを開発するとともに、必要なソフトウェアを開発」することとし、とくにマルチスケール・マルチフィジックスによる複雑系シミュレーションの重要性を強調しています。
国立大学と大学共同利用機関が法人化されました。国立大学等が法人格を持ち、主体として意思決定できること自体にはプラスの面も少なくありませんが、実際には、それを口実に運営費交付金が減らされ、教員が削減され、大学の評価や競争的資金獲得に向けた事務作業に時間をとられ、教員の教育・研究以外の負担が重くなったことが指摘されています。
これまで、大型計算機センターのスーパーコンピュータ等のレンタル費や運営経費は付属施設経費としてひも付きになっていたが、法人化により運営交付金の基礎額として配分されることになり、他に流用される可能性が生じました。また、18年間運用してきた共通利用番号制は、廃止されました。
AIST(産業技術総合研究所)は、AISTスーパークラスタの運用を始めました。これはOpteronベースのP-32クラスタ、Itanium 2ベースのM-64クラスタ、XeonベースのF-32クラスタ、およびストレージ部から成ります。
京都大学学術情報メディアセンターは、2004年3月、ベクトルスーパーコンピュータVPP800を、スカラスーパーコンピュータであるFujitsu PRIMEPOWER HPC2500に更新しました。また、九州大学情報基盤センターも、2005年3月からIBMのp5サーバを導入すると発表しました。
筑波大学では、1992年に設置された計算物理学研究センターを拡充改組し、計算科学研究センターを設置しました。6月に創立シンポジウムが開催されました。
東京大学等の研究グループ(研究代表平木敬)は、2004年度科学技術振興調整費に採択され、超並列で2 PFlopsを実現する「GRAPE-DRプロジェクト」に着手したと発表しました。
次回は「日本の学界の動き」の続きです。私個人は、Winny開発者の金子氏逮捕や学会事務センター経営破綻により翻弄されました。また、国内で開かれた会議を紹介します。
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小柳義夫