2009年のHPC(その一)

HPC関係者の皆様

「平成の語り部」小柳義夫です。電子ジャーナルHPCwire Japan https://www.hpcwire.jp/
に連載中の『新HPCの歩み』は、本日公開の分から2009年が始まりました。全16回です。今週の2009年(a)(第277回)から(d)(第280回)まで4回にわたって、「次世代スーパーコンピュータ開発」の動きを追います。次世代スーパーコンピュータ計画にとって、2009年は激動の年でした。というか、前年のリーマンショックを受けて、世界中のHPCに激震が走りました。

次世代スーパーコンピュータプロジェクトは2006年度から開始し、3年目に入りました。そのためプロジェクトの中間評価を行う必要があったので、次世代スーパーコンピュータプロジェクト中間評価作業部会(主査:土居範久)が設置され私もメンバとなりました。

このプロジェクトは、ベクトルとスカラの複合システムにより、Linpackで10 PFlopsを実現し、完成時にTop500でNo.1となることを目標(「努力目標」ではなく、実現すべき目標)として進められてきました。他方、競争相手のアメリカでは、DOEやNSFなど複数の政府機関がスーパーコンピュータ開発を互いに競っており、とくに、Illinois大学のBlue Watersと、LLNLのSequoiaが強敵でした。どちらかでも予定通り完成したら、日本の勝ち目はありません。この話は次回(b)で詳しく述べます。

このプロジェクトでは、ハードやシステムを開発するだけでなく、応用分野の開発も重要な課題です。そのため、次世代スーパーコンピュータ戦略委員会は、まず戦略分野とそれを担う戦略機関の選定を行いました。社会的・国家的見地から取り組むべき分野・課題で、これまでの計算機ではその性能上困難であった課題が解明され、当該研究分野において大きなブレークスルーがもたらされる分野は何かについて長時間にわたって議論しました。その結果、7月、次世代スーパーコンピュータ戦略プログラムの5つの戦略分野が設定されました。

続いて、それを中心的に担当する戦略機関を公募し、10月、大議論の末に決定しました。でも、これはまだ仮決定で、1年半の実施可能性調査(feasibility study)を行った後、本決定を行うこととなりました。5つの戦略分野には、次世代スーパーコンピュータの資源の一部が公募とは別に割り当てられ、稼働後5年間で具体的な成果を出すことが求められます。

この頃の文部科学省などのweb上の記録は消去されつつありますが、幸い、国立国会図書館による「国立国会図書館インターネット資料収集保存事業」(WARP、2010年にこれに名称変更)によりアーカイブされており、本記事でも出来るだけそこへのリンクを貼っております。興味のある方はリンクをクリックしてぜひとも生データをご覧ください。議事録には、生々しい速記レベルのものもあります。

2025年12月25日から、アーカイブされる記事のURLの設定ルールが変更され、
https://warp.ndl.go.jp/web/20240106212508/https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/….
などのように、元URLの”https://”が含まれるようになりました。ところが、MicrosoftのWordやOutlookには、「張られたリンクパス中の連続するスラッシュ(/)は、1個のスラッシュに変換する」という仕様(私はバグだと思うのですが)があり、正しくリンクされません。わたしは原稿をWordで書いていますが、西編集長からリンクがつながらないとのご指摘があり、この事情が判明しました。Optionの設定ぐらいでは治らず、レジストリを編集して、AllowConsecutiveSlashesInUrlPathComponentの値を1に変更することが必要だそうで素人には手が出ません。今回は西編集長に手でリンクを貼っていただいております。

さて、次回の2009年(b)は、中間評価作業部会でのすったもんだです。

既発表記事の総目次はhttps://www.hpcwire.jp/new50history
にあります。ご愛読を感謝します。

小柳義夫