2010年のHPC(その三)

HPC関係者の皆様
 
「平成の語り部」小柳義夫です。電子ジャーナルHPCwire Japan https://www.hpcwire.jp/
に連載中の『新HPCの歩み』は、2010年の歩みを書いています。先週の第296回-2010年(d)-と、今週の第297回-2010年(e)-は、日本政府関係の動きと、大学センター関係の動きです。
 
学術会議の情報学シンポジウムが開催され、「30年後の未来予想としての情報分野ロードマップ」と題するパネルディスカッションが企画されました。情報学で30年後なんてそもそも語れるのでしょうか。データ・セントリック科学の議論はありましたが、生成AIの活躍なんてだれも予想もしていませんでした。
 
学術振興会では、G8の国際協力で多国間国際研究協力事業(G8 Research Councils Initiative)を新たに始めました。第1回の公募で「エクサスケール・コンピューティングを視野に入れた地球規模課題のための応用ソフトに関する学際的プログラム」の募集が行われました。79件の応募があり、6件が採択されました。
 
昨年設置された第2世代の地球シミュレータES2(NEC SX-9/E)が成果を出し始めました。9月に利用者連絡会が開かれましたが、2.56 Byte/Flopの相対バンド幅に不満が出ました。初代のESの4 B/Fよりは減ったとは言え、それでも十分大きいB/F値です。わたしは、運営委員長として、「贅沢言うな」「京に比べればはるかにましだ」と批判的な発言をしました。第3世代のESのありかたについての議論も始まりました。
 
昨年のHPCI構想では、高速ネットワークと大規模ストレージをべースに、システムの統合や連携を行うことになっていましたが、ネットワークはSINETを使うとして、大規模ストレージはどうするのだろうと疑問に思っていました。これに答えたのが、「e-サイエンス実現のためのシステム統合・連携ソフトウェアの高度利用促進」で、この予算により柏と神戸に大規模ストレージを置くことになりました。
 
JSTは、米澤明憲教授を研究総括として、「ポストペタスケール高性能計算に資するシステムソフトウェア技術の創出」(通称ポストペタ)という研究領域のCRESTを始めました。これも、ポスト京を睨んだプロジェクトの一つと言えるでしょう。
 
大学センター関係では、学際大規模情報基盤共同利用・共同研究拠点(JHPCN)が正式に始まり、予算も付きました。九州大学の青柳センター長から依頼されたので、私は運営委員会に外部委員として加わりました。
 
9センターの内、唯一JHPCNに参加していない筑波大学計算科学研究センターは、単立で先端学際計算科学共同研究拠点が認定されました。サービスセンターではなく、研究センターとして発足した歴史の違いと思われます。
 
東京工業大学のTSUBAME2.0は、11月に稼働しました。2010年11月のTop500では、日本ではトップのRmax=1.192 PFlopsで4位を獲得し、日本初のPFlopsマシンとなりました、デンドライト結晶成長で2011年Gordon Bell賞を受賞します。
 
次回は、日本の学界の動きです。ついに円周率5兆桁が家庭のパソコンで計算されます。アイスランドで火山が爆発してヨーロッパ中に火山灰をまき散らし飛行機が飛ばなくなり、世界を股にかけて活躍する日本のHPC関係者の何人かが足止めを食らいました。
 
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小柳義夫

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